文明崩壊


 ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊〜滅亡と存続の命運を分けるもの』文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
年末から読み始めて、ようやく読み終わりました〜。


 前半は、かつて文明が栄えていた社会が
なぜ存続出来ずに滅びてしまったのか・・。
イースター島・マヤ・グリーンランドなどなど
世界のさまざまな地域の、異なった境遇にある文明を
例に取り挙げています。


 後半は、現在地球規模で進行しつつある問題について
アフリカ・ドミニカ共和国とハイチ・中国・オーストラリアを例に。
また、将来に向けて崩壊の危機を乗り越える
可能性をさぐっています。


 私は今まで、古代の文明が滅びたのは
戦争か疫病か何かによるものか・・と漠然と思っていたのですが
本書では「崩壊を招く要因」として5つのことが挙げられています。

 1 環境被害
 2 気候変動
 3 近隣の敵対集団
 4 友好的な取引相手
 5 環境問題への社会の対応


 驚くのは、滅びた文明ではすべてこの5つの要因が
何らかの形で関わっているということ。
そしてそれは、過去のことだけではなく
今の私達もまさに損ないつつあるものである・・ということが
多くの詳細な証拠と共に、繰り返し語られています。


 ただ、語り口は決して悲観的なばかりではなく
今の状況を見据えて、失敗しない道を選ぶ方法はある・・
というか選んで欲しい・・というメッセージがこめられています。


 莫大な情報がつめこまれていますが、銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
専門外の人にでも分かり易く書かれた本です。
前作の『銃・病原菌・鉄』もかなり面白かったですが
これからの世界に踏み込んでいる分
本書のほうが、深く考えさせられることが多かったかも。 


 ちなみに日本のことにも少しふれてある部分があります。
ひとつは、江戸時代の徳川幕府
木材の乱伐を規制し森林回復に成功したこと・・。
また、現在では自国の森林は保護しつつも
海外の森林資源を多く輸入することで、他国の資源を崩壊させていること・・。
このことを認識するだけでも意義あるかもしれません・・。