わたしを離さないで


 カズオ・イシグロさんの『わたしを離さないで』読了しました。わたしを離さないで


 久々の新作だったので楽しみに読んだのですが、
期待を裏切らない一冊でした。
今年読んだ小説の中でベストです。
去年まで含めてもベストかもしれない・・!


 『提供者』と呼ばれる人々の『介護人』をしている主人公のキャシーが、
幼い頃育った寄宿学校ヘールシャムとその友人たちのことを
回想する・・というもの。


 まず『提供者』『介護人』という呼び方に
かすかな違和感を覚えつつ読み始めるのだけど、
その意味が明らかにされていくにつれて
だんだんと恐怖感が増していきました。

 

 どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついてる。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ?


 途中で読み出したらとまらなくなって一気に読んでしまいました。
淡々と書かれた端正な文章は、読んでいて気持ちが良いです。
土屋政雄さん訳というのもうれしいですね。
日の名残り』とは全く違う雰囲気ですが、
こちらもまた好きな一冊になりそうです。