きみのためのバラ


きみのためのバラ

 池澤夏樹さんの『きみのためのバラ』読了。
久々の短編集で楽しみだったのですが、期待以上の内容でした!


 8篇短篇は、ヘルシンキミュンヘン・メキシコ・沖縄と色々な国が舞台。
読んでいると、まるで自分もその土地の空気にふれたように、
リフレッシュ出来る一冊でした。
池澤夏樹さんだからこそ書けるんでしょうね。

「そうだな。以前とあまり変わらなかったかもしれない。だが、大袈裟な言いかたをしてみれば、パリで人間というものの奥行きを知ったかとも思う。それ以前、新聞をやっていた頃までは私は思想を見て、言葉を見て、人間を見なかった。パリの半年間は私の人生にとってカウントされない時間で、その間に私はひたすら他人を観察した。その分だけ人間を知るようになった。広場は十分に役に立ったよ、私にとって。」

                                       「人生の広場」より


 主人公は大人の男性・女性・少年と、こちらもバラエティ豊か。
でも何故かそういう違いは全然気にならなくて
どの作品もすっとその人物に入っていける感じがしました。


 何歳であってもふと立ち止まって、自分を深める時間って必要だなと。
この本を読んでいると、一瞬そんな時間をもてたような気分になれました。