存在の耐えられない軽さ

 存在の耐えられない軽さ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-3)
 ミラン・クンデラ著『存在の耐えられない軽さ』読了。
以前一度読んでいたのですが、今回新訳とのことで再び。


 著者のクンデラ氏は、この作品には思い入れがあって
今でもまだ手を加えているそう。
70歳を過ぎてなおまだそんな精力的な活動をされていることにまず驚き。


 登場人物は、医者のトマーシュに妻のテレザ、
トマーシュの愛人で画家のサビナとその恋人フランツ。
ストーリーはその4人の四角関係・・なのだけど
哲学的な内容とチェコの歴史的な背景がからんでくるので
かなり内容の濃い物語です。


 物語というより、クンデラ氏の思いを4人の登場人物に託して描いた・・という印象かも。
もちろんそういうのを抜きにしても面白く読めました。

 

 このうえなく重い荷物は私たちを圧倒し、屈服させて、地面に押しつける。だが、あらゆる世紀の恋愛詩では、女性は男性の身体という重荷を受けいれたいと欲するのだ。だから、このうえなく重い荷物はまた、このうえなく強烈な生の成就のイメージにもなる。荷物が重ければ重いほど、それだけ私たちの人生は大地に近くなり、ますます現実に、そして真実になるのである。
 逆に重荷がすっかりなくなってしまうと、人間は空気よりも軽くなり、飛び立って大地から、地上の存在から遠ざかり、もうなかば現実のものではなくなって、その動きは自由であればあるほど無意味になってしまう。
 では、なにを選ぶべきなのか?重さか、それとも軽さか?