異国の客

 
 池澤夏樹さんのエッセイ、『異国の客』読了しました。異国の客
沖縄にお住まいかと思っていたら、
一昨年からフランス郊外の、フォンテーヌブローという町に
移住されているそう。


 薪の暖炉がある家に住み、朝市で魚貝類を買う・・
流行りのスローライフを綴った本かと思いつつ読んでいたら
いい意味で、期待を裏切られました。


 もちろん、日々の生活のこととかフランスの事情も色々と書かれていますが、
ローマ法王の話だったり、EUの話だったりと
どんどん話は広がっていきます。

 

ここに住んでいると思わぬ展開が多い。たまたま出会った一つのテーマがたちまちのうちに膨らむ。それは、フォンテーヌブローという町の偶然ではなく、人が新しい土地に移った時にいつも起こる現象と考えるべきだろう。一定の好奇心と観察力があればそれは起こらざるを得ない。しかし今はそれが予想以上次々に到来して、こちらは対応にいとまがないという状態。


 一定の好奇心と観察力・・と述べてあるけれど
それに加えて、アンテナの広さと見識の深さがなければ
いろいろあっても、ただのささいな出来事として
通り過ぎてしまうことも多いような気がします。
池澤さんだからこそなのでしょう。


 あらためて、世界のことについて、また日本のことについて
思いをめぐらすきっかけになる一冊だと思います。